野党のいない政治

中道改革連合解体で、日本から野党が消える
木下ちがや(こたつぬこ) 2026.08.29
誰でも

「野党がいない議会政治」というのを想像できるでしょうか。いや結構想像出来ちゃいますよね。というのも、日本の政治報道というのは基本的にずっと与党の中心を占めてきた自民党であり、野党政治家が週刊誌記事のトップを飾るのはごくごくたまに起きるスキャンダル程度しかありません。一般庶民にとっては自民党はそこそこ知っているが、野党については選挙のときに思い出す程度というのが大半でしょう。とりわけ近年のような、新興政党が現れては消える状況下において、野党の認知度はますます低下しています。

今年2月の総選挙で自民党が歴史的圧勝を遂げ、野党の存在感はますます希薄になっていました。衆議院野党第一党は衆議院の公明党、立憲民主党が合同した中道改革連合で、50議席程度を有しています。ところが今、この中道改革連合が解体しかねない状況になっています。

昨年末より、立憲民主党と公明党は連携協議をすすめていました。党勢が低落し、刷新しなければ瓦解しかねない状況にあった立憲と、連立政権から離脱し、新たなパートナーを探していた公明党の思惑が合致したからです。ところがこの連携に危機感を抱いた高市総理は今年1月に電撃的な解散を打ちます。立憲、公明は慌てて衆議院だけを合流し、中道改革連合を結成して総選挙に挑んだのです。結果は惨敗。とはいえ、1000万票を獲得したこの新しい器を拠点に野党を再建していくだろうと思われていました。

ところが、参議院と地方議員が残されていた立憲民主党は、総選挙の惨敗を受けて合流を躊躇するようになりました。以後半年間、衆院と参院にまた裂き状態の公明党は統制を維持するのに必死で、早く合流を遂げるよう促していました。しかし今月28日、立憲は「やっぱり合流できません」と中道、公明に通告。合流派ご破算になりました。

有権者は結果をみるのであって、こんなプロセスは興味ないでしょう。実際、週刊誌にはこのプロセスについてほぼ、関心を示していません。でも来週の週刊誌は、立憲民主党の無能さをはじめとする、中道改革の混乱を面白おかしく取り上げることでしょう。それを読んだ読者諸氏が「結局野党ダメじゃん」とさっさと頁をめくるのが目に浮かびます。

こんな空気のような野党ですが、空気はなくなれば息苦しくなります。仮に中道改革連合が解体し、立憲系、公明系に衆議院議員が分かれたならば、野党第一党は28議席を有する国民民主党と、同じく28議席を有する公明党になります。野党第一党が28議席しかない事態は、いうまでもなく戦後初めてです。1955年の保守合同以降、自民党が過半数をもち、社会党が4分の一程度をもつ体制は「55年体制」と呼ばれました。2010年代は自公政権が過半数を維持し、立憲民主党が4分の一程度をもつ体制を「ネオ55年体制」と呼ばれました。どうも「2026年体制」は、自民党が3分の2の議席を獲得し、あとは20議席程度の野党が散在しているというものになりかねないのです。

「55年体制」「ネオ55年体制」のもとでは、野党第一党はなんやかんやで週刊誌にも取り上げられ、読者に「駄目だなあ」といわれながらも存在感がありました。でも「2026年体制」ではもはや取り上げられることもなく、駄目とすら思われなくもなるかもしれません。そうなれば自民党の政権陥落の心配が一切なくなり、結束よりも内部の権力闘争に専念していくことになるでしょう。スキャンダルがいくらでても代わりがいないから平気。ダメな野党でも、存在していたから与党は襟を正さなければならなかった。それがいなくなれば、もうやりたい放題ということになります。野党がいなくなれば、政府与党は腐敗していく。中道改革連合の解体は、日本の議会制民主主義が壊れゆく引き金になりかねないのです。来週の週刊誌では、なにもやらないでダラダラ時間を浪費した立憲執行部の醜態が暴露されるでしょうが、かれらの無能の被害を被るのはわたしたち国民です。

公明党は、立憲民主党が約束を破ったことに怒り心頭でしょう。でも愚かな立憲を見捨てることが、衆院野党第一党の解体につながり、議会制民主主義の破壊に加担することになるのを自覚してほしい。個々の政党の利害ではなく、日本の民主主義を守るという観点からの大局的判断をしてほしい。「ダメな政党だな」とあきれられても、まだ読んでもらえるだけマシなんですから。

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