週刊誌深読み・国家情報局は何をするのか・24年4月25日
国家情報局とは何か
昨日衆議院で国家情報局設置法案が可決されました。「日本版CIA」などといわれ、市民運動などへの監視が強化されるともいわれるこの法案を、今週の週刊誌の記事と絡めて説明してみましょう。
国家情報局は、警察や公安調査庁など各省庁にまたがる情報を内閣総理大臣のもと一括して集約し、国家の情報戦略を強化することを目的としたものです。したがってこの法案そのものは、政府の監視・情報収集権限の強化のためのものではなく、政府機関内の機構を再編するものになります。具体的には内閣調査室を格上げするかたちをとります。
この内閣調査室は「内調」などといわれ、映画「新聞記者」ではおどろおどろしい諜報機関のように描かれましたが、実体は各省庁からの出向者により編成され、主に新聞や週刊誌などの公然情報を収集し、官邸に報告するというかなり「軽量級」の機関といわれています。収集した野党に不利な情報をマスコミに流したり、大臣候補者の身体検査をしたりといったところが仕事でしょうか。各省庁は「縦割り」であり、自分たちが収集した情報は「内調如き」には渡さない。国家情報局はこの縄張り関係を克服できるかが鍵となります(無理だとおもいますが)。
今週の記事:週刊文春「新・参院のドン 政治資金1900万円還流疑惑」
国家情報局が基本的に内閣調査室と似たような機能を果たすとすれば、総理が活用するのは市民運動の監視などではなく、党内闘争でしょう。スターリンからプーチンまで、国家のリーダーは一番欲しい情報は外側ではなく内部の敵の情報です。派閥争いが激しかったかつての自民党でも、情報を入手し、政敵を追い落とすことがやられてきました。野中広務元幹事長は、国会議員のなかでもっとも早く携帯電話を導入し、情報収集能力の高さでのし上がったとも言われています。派閥の強い時代の情報収集は「党内競争」活性化の手段でしたが、官邸主導型の現在の政治では「党内統制」の手段になっているともいえます。国家情報局の設置による情報の一元化は、与党の多元的な機能の弱体化に拍車をかけることになるかもしれません。
今週の週刊文春は、石井準一自民党参院幹事長が、自身のファミリー企業に累計1900万円の家賃を支出しており、これが資金還流ではないかという疑惑を報じています。これはかなりグレーな案件で、ただちに法令違反とはいえないともいえますが、問題はなぜこのタイミングで記事がだされたかです。
石井幹事長は「新・参院のドン」と呼ばれるように、先日参議院議員40人を集めたグループを結成しました。与党は衆議院では圧勝したものの、参議院はいまの少数のまま。それにもかかわらず高市総理は参議院を軽視した「どうせいうことは聞くだろう」という舐めた対応をしてきましたが、この石井幹事長は先の予算審議で抵抗し、高市総理は暫定予算を組むことに追いやられました。参院で影響力を増大する石井幹事長は、目下のところ高市総理の最大の障害物になっています。
ですからこの石井幹事長のスキャンダル記事が水曜日に流れた時、永田町では「総理の報復だ」とささやかれていました。仮にそうだとすれば、週刊誌にリークされた石井幹事長の情報源は内閣調査室なのかもしれません。記事の内容自体は「ジャブ」程度のものかもしれませんが、「次はストレート」という脅しが、石井幹事長の行動を萎縮させるかもしれません。
もちろんこれはあくまで推測です。週刊文春の記者の丹念な取材の蓄積の成果かもしれません。ただ国家情報局が設置されると、総理大臣がそれをどう活用したいかの欲望の矛先が向かうところがどこかを示す好個の事例といえるでしょう。
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