週刊誌深読み・今井尚哉の野望・26年4月9日
今週から毎週、主に週刊誌、時には月刊誌の注目記事を解説していきます。僕が学生時代の90年代初頭は雑誌全盛期、書店のコーナーには左右さまざまな雑誌が溢れていました。でもいまはネット全盛の時代で、コーナーは縮小、コンビニの棚も小さくなり、週刊誌はやや手に届きにくくなっています。でも週刊誌にはネット記事にはない、あるいは新聞とも異なる独特のメディアとしての機能があります。それについてはおいおい説明していきますが、雑誌を読み解くことから、できるだけ多くの皆さんに雑誌を手に取ってほしい。そういう想いで発信をしていきます。
今週の注目記事-週刊文春「高市3人の親衛隊と隠し部屋に引きこもり」
この記事の表題は、高市総理が官邸執務室の奥に引きこもり、ごく限られた側近としかやりとりしていないというもの。この高市総理と周辺との人間関係のこじれについてはすでにいろいろなマスコミが報じていますので、そう大した内容ではありません。ポイントは記事のなかのある一節です。高市政権の参与である今井尚哉氏が、週刊文春に電話をかけてきたという下り。なぜ、電話をかけてきたのか。
先週、『選択』という雑誌が高市総理についてのスクープ記事をだし、政治界隈が大騒ぎになりました。記事の内容の一部がウェブで読めますので張っておきます。
今井尚哉参与が、日米首脳会談でトランプ大統領の自衛隊派遣に応じようとする高市総理を、「恫喝」してねじ伏せ、怒りの総理が「だったら辞めてやる」、「あいつは切る」と激高したという記事です。この記事をめぐっては事実なのか、リークしたのは誰かといった憶測が広がり、ネット上でも喧騒の応酬が繰り広げられました。
『選択』という雑誌は書店では買えない会員制の雑誌です。「怪しい雑誌」などとネット上ではいわれますが、主に現役の記者や関係者が、匿名で執筆するインサイダー誌ですので、一般の週刊誌に比べて信用度が低いということはありません。この『選択』で書かれた内容について、今井尚哉参与は週刊文春に「抗議」の電話をしたのです。
記事の該当部分を要約するとこうです。今井尚哉「私はそんなことはしていないし、言ってもいません」
なんだ、じゃあ『選択』の記事はデマだったのか…そう思うかもしれませんが、ここからが週刊誌の見せどころです。
なぜ、文春に電話したのか
そもそもスクープ記事をだしたのは『選択』です。週刊文春の先週号を確認しても、この記事にあたる内容のことには触れられていません。今井氏はなぜ、週刊文春に電話し、取材に応じたのでしょうか。先にも述べましたように、『選択』は会員制ですので、会員以外は読めません。週刊文春はいうまでもなく誰でも読めます。文春が取り上げるタイミングにわざわざ電話をするなんで、飛んで火にいる夏の虫ではないでしょうか。今井さんは意図的に夏の虫になったのではないでしょうか。
ここで今井尚哉氏についてすこし説明しておきます。今井氏は経済産業省出身で第二次安倍政権で秘書官・補佐官を務めた官邸官僚です。当時週刊文春が今井氏の剛腕ぶりを紹介する記事をだしていて、その中で安倍総理が「今井ちゃんは頭いいねえ」と感心する下りがでてきます。今井氏は外交から内政まで安倍政権の方針を立て、スケジューリングをやり、時には越権的ともいえる策謀をこらした「闇の総理」といわれていました。安倍政権の継承を図る高市総理は、今井氏を補佐官に迎えようとしましたが、あくまで参与という格下の地位ならということで引き受けたようです。そして年明けあたりから、総理と今井氏の間の不協和音がいわれるようになっていました。そこででたのが『選択』の記事です。
この記事をめぐっては、今井氏自身がリークしたという見方が強くあります。何のためか?この記事が評判を呼べば、総理はおいそれと今井氏を切れなくなるからです。だって切ったら記事の内容が本当の事だと認めるに等しいわけですから。4月7日の参議院の質疑で、高市総理は「今井さんの名誉のために言うが、そのような話を私のところにしに来られたことはない」と答弁しています。その翌日に、文春はこの記事の見出しをうちました。こうやって総理はどんどんと巻き込まれていきます。
さらに文春の今井氏の発言には気になるところがいくつかあります。解任されたらどうするのかという編集部の問いに「解任されないだろうけど、抵抗はしない」と答えたり、衆議院の解散については「何度か相談をし…意見をいった」と答えたり。総理と解散時期を相談したということをさらっと話していますが、現役の参与と言う立場でこれを明らかにするというのは政治の常道からするとありえません。今井氏は『選択』の記事内容を否定しつつも、実に多弁に自己顕示していることが、なんか編集部とのやりとりが芝居じみているなあということは、本誌を読んでいただければわかります。
では、今井氏は何を狙っているのか
さらに今号の週刊新潮でも、今井氏が高市総理に不満をもらすエピソードが掲載されています。https://www.dailyshincho.jp/article/2026/04081132/?all=1&page=2#google_vignette
高市vs今井の抗争がいろいろなメディア演出され、本人もご登場というわけなのです。こうなってくると、『選択』で書かれたやりとりがどこまで正確かということをもはや離れて、政治的文脈がつくりあげられていることがわかります。
では、今井氏の狙いはなにか。単に高市総理から切られないための牽制なのでしょうか。でも牽制にしては「やりすぎ」ではないでしょうか。ならば総理の進退に刺さる動きなのか。このあたりはまだはっきりわかりません。
今井尚哉氏はなにを狙っているのか。ここに週刊誌がどうからむのか。それは次週以降の展開をみるしかありません。
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